リンドバーグ1/48アベンジャーのカラクリ

モノグラムの透明ムスタングと肩を並べるオール可動のカラクリ飛行機キットにリンドバーグ1/48アベンジャーキットがあります。個人的に大好きなアメリカン・オールドキットですが、50年代後半に発売された初版のギミックはその後すぐ廃止されたのでこのアクション・ギミックはあまり知られていないようです。

60年代の日本プラモ・シーンほど可動キットやモーターライズ・キットがもてはやされた事はありません。飛行機キットの場合その可動ブームの火付け役となったのは前記モノグラムの透明ムスタングやレベル1/40スカイレーダーなど50年代のアメリカ製キットでした。アクション・ギミック付キットが日本でおおいにもてはやされ、アメリカ製キットを上回る数のキットが作られたのに対し、当時イギリスのモデル・シーンにまったく影響が見られないのは興味深いですね。

1/48のアベンジャーと言えば可動キット全盛期を象徴する名作モノグラムのキットがあり、まとめかたのうまさではこちらモノグラムに軍配が上がるでしょう。この可動モノグラム1/48キットに影響を受けた日本のキットは数多くありますが、そのなかでもアオシマの1/72(実際は1/90位)アベンジャーはモノグラム・キットのミニチュアといってもいいほど似ていて可動パーツもそっくりです。(日模の1/48アベンジャーは元はマルサンがモノグラムをコピーしたもの)一方、当時ニットーから出ていた1/72アベンジャーは「爆音ギミック」がつくところなど、リンドバーグ的と言えるかもしれません。今回紹介するリンドバーグ1/48アベンジャーには「爆音ギミック」は付きませんが、他のリンドバーグキットに同種のギミックがありました。

リンドバーグ1/48アベンジャーは、モノグラムにないモータライズに加え、初版ではなんと三舵全てが実機同様操作出来るというモノグラムを上回るオール可動キットでした。

コックピット内のペダルや操縦幹を操作するとそれぞれに針金でリンクされたエルロン、方向舵、昇降舵が動く!!という実に意欲的なキットです。残念ながらこの可動リンクは初版のみで以降オミットされました。プラスティックパーツのうち舵の可動に関わるベルクランクなどのパーツがオミットされていますが実機同様前後左右に動く操縦幹はそのままですので、針金を調達すれば最終版でもリンク可動に出来るでしょう。

爆弾倉扉は片側それぞれ2つのパーツからなりモノグラムより実機に忠実と言えそうです。エンジンも別パーツで再現されカウリングをはずして見ることができます。(ちなみにタミヤの1/48零戦21型が発売になった1970年代初期、こちらのモデラーは他に適当な1/48 エンジン付キットがなかったのでこのエンジンを栄12型に見立て流用したそうです。)キットには魚雷以外に爆雷も用意され、モノグラムにはなかったラジオオペレータのフィギュアもシートと別パーツで用意されています。オーバースケール気味ながらアベンジャー独特の左右別々にスライドする操縦席の風防も可動で再現してあります。

また初版には非常に良くできた、パーツ18点からなるトウ・トラクターとドライバーが付いていました。80年代にリンドバーグから新キットとして発売になった1/48スナークが実は50年代に作られながらお蔵入りになったキットであったことは意外に知られていませんが、このトラクターとドライバーを見れば、1/48スナークが当時同じ原型師の手によって作られたものと分かります。

リンドバーグは他にも戦車を含む多くのモータライズ・キットを発売しており、これらは70年代中頃まで販売されていました。1/48ジェット機にはモーターでジェットサウンドを出すギミックが付いています。これには金属片をこするタイプと、笛を回転させるタイプの2種があります。(今でも売られているモノグラム1/72 Bー52 も発売当時は同じ「爆音ギミック」をつけていました。)リンドバーグ1/48 F8U クルセーダーなどこのサウンド・ギミックに加え、輪ゴムで発射する(笑)イジェクター・シートのギミックもあり、オモチャ的ながらオールドキット・ファンを楽しませてくれます。またリンドバーグ・モータライズ・シリーズのユニークなところは、モーターがキットになっていて自分で組むというものでした。箱にもEDUCATIONALなどの文字があり、教材としてアピールしていた様です。

リンドバーグの1/48アベンジャーは50年代の初版以来、いくつかのバージョンを経て販売されています。キットナンバーは初版が#527。 キット#2506で可動リンクとトラクターが廃止されました。80年代のオールドキット再販ブーム時にはレベルの「ヒストリー・メイカー」やモノグラム「ヘリテイジ・シリーズ」の向こうを張ってリンドバーグは「クラシック・レプリカシリーズ」と銘打ち、いくつかのオールドキットを復活させました。このアベンジャは#5307として再販になりましたがモータライズもオミットされています。

そして最後に発売されたのは90年代初頭に出された「ジョージ・ブッシュ大統領版」です。キットのデカールが大戦中にアベンジャーのパイロットだったブッシュ元大統領の愛機のマーキングになっており、操縦席付近に貼る"Barbara"のデカールもしっかり入っています。^^)ちなみにブッシュ大統領の操縦するアベンジャーは父島近海で撃墜され、彼は漂流の後、米潜水艦に救助された経緯があります。

余談ついでに、同じ「カラクリ」を持った他のオールドキットに、エレールの1/50 旧シュペール・エータンダールのキットがあります。こちらは針金ならぬ糸をつかった、まさに「あやつり人形的カラクリ」でイラっとさせられる一方、脚が強力なスプリングで飛び出したり^^)と、ゲテモノ・キット・ファンならおススメしたいキットです。

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