映画 "DARK BLUE WORLD" & "PIECE OF CAKE"

"DARK BLUE WORLD"バトル・オブ・ブリテン当時のRAF チェコスロバキアン・スコードロンを題材にした新作「Dark Blue World」という映画を先日見てきました。チェコの監督による1時間55分のローバジェット映画(といっても6百万ドル)ですが、鼻につくCGはほとんどなく好感が持てました。懐かしい「空軍大戦略」や後で紹介する"A PIECE OF CAKE"の空撮シーンも使っていましたが、新たな空撮も多く、久々に大画面 で見るスピットファイアは、なかなか良かったです。(映画「パールハーバー」のスピットファイアはほとんどCGだったので)なんとこの映画にも「恋愛三角関係」プロットが使われてますが、最近の戦争映画にはお約束のようですネ。

ストーリーの中心になるバトル・オブ・ブリテン中の出来事は、戦後チェコスロバキア政府から反共分子とみなされ強制労働に従事させられた元RAF チェコパイロットの回想として収容所内の出来事と交互に語られます。これは「ラスト・エンペラー」と同じ手法ですが、この映画には強い「反共」テーマが見て取れます。

"PIECE OF CAKE" この「Dark Blue World」に関連してですが、折りに触れ皆さんにお薦めしている(笑)バトル・オブ・ブリテンを舞台にした私の大好きな英国BBC製作のTV映画、" PIECE OF CAKE" の邦題が分かりました。「フライトジャケット」だそうでレンタルビデオのみですが日本でも見れるそうですので、機会があれば、是非、是非(笑)一度ご覧になってください。私など今回の「Dark Blue World」のような似た内容の映画を見るにつけ、やっぱり" PIECE OF CAKE"のほうが上だな〜と思ってしまいますので、これを機にもう一度ご紹介したいと思います。

" PIECE OF CAKE"は1988年(もう随分昔になりました)にイギリス、アメリカ、カナダ等で6話に分けて放送されたTVシリーズで計6時間のTV映画です。題名の"PIECE OF CAKE"は、今でも欧米では良く使われる表現でRAFパイロット達が好んで使った言葉です。これは "Walking in the park" と同じく「朝飯前」「寝ていても出来る」「楽勝」など楽で簡単な事を指します。実際にこの言葉 " PIECE OF CAKE"を使い始めたのは第二次大戦中のRAFパイロット達だそうで、これは辞書にもそう記されていますから題名としては完璧です。イギリスのパイロット達は当時からどんな窮地に追い込まれても努めて平静を装うのを良しとしたようで、当時録音されたパイロットの通 信を聞いてもアメリカ軍とはハッキリ違います。

原作はデレク・ロビンソンのベスト・セラー小説で、RAF(ロイアル・エア・フォース)イギリス空軍の架空の部隊 "ホーネット・スコードロン"の活躍を大戦初期のバトル・オブ・フランス(Phoney war)からバトル・オブ・ブリテン中期にまで渡って描かれています。フィクションとは言えリサーチは完璧で、多くの実話を元に纏められています。

映画"PIECE OF CAKE"には他に「空軍大戦略」で使われたお馴染みのスペイン製メッサーシュミット109(ヒスパノ製)とハインケルHE-111(カサ製)が使われ、さらにドラゴン・ラピードの実機も登場します。撃墜されたHe-111の残骸なども良くできていました。RAF戦闘機は、ほんとうならハリケーンが登場しないといけないのですが、飛行可能なハリケーンの数が揃わなかったためスピットファイアを集めて撮影されました。地上シーンではファイバーグラス製の自動車エンジンでTAXINGするスピットファイアのレプリカ(鋼管溶接のフレームにファイバーグラスのシェルを被せたもの)を使い機数を増やしていますが、なかなか良い出来でした。1/1 スピットファイアのプラモデルと言ったところでしょうか。このレプリカ製作を請け負った会社が、以来個人向けにスピットファイアのレプリカ販売をしていると聞いていましたが、上記、新作「Dark Blue World」にも使われているようで、映画のクレジットには「スピットファイア・レプリカ製作」として英国風の名前がチェコ系の名前に混じって出ていました。

"PIECE OF CAKE"は、基本的に人間ドラマが中心になっていますが、6時間の長さで描かれるパイロット達は、日々死と直面 しながらも人種、社会階級、思想、恋愛などごく日常的な問題を抱え、悩み、そして死んでいきます。華々しい戦闘機部隊の活躍が「非常に危険な仕事に就く複数の男達とその職場」としてリアルに見えて来るところがあり、2時間の戦争映画では決して描く事の出来ない世界を描いて秀逸です。

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