プラモデル読本

「プラモデル読本」とは今では伝説になりつつある(?)雑誌「プラモガイド」のさらに前身で1961年に航空情報編集の「航空ファン読本」の臨時増刊として一冊のみ発行されました。実に38年前の事ですが日本でプラモデルが趣味として一般大衆のあいだに広まり第一次ブームとなった頃です。ちなみに「プラモガイド」は、この後一年置いて1963年からスタートし1974年までの間に年一冊ないし2冊発行され、合計14冊発行されました。

「航空ファン読本」のサイズは150mm X 210mmで、初期のプラモガイドよりひとまわり大きいサイズです。内容は当時比較的一般に入手しやすくなったラベール!(レベル)およびマルサンのキットを中心にプラモデル全般の紹介と、入門向けに書かれた読み物(購入の際の注意点等)が中心になっていて、プラモガイドのような一点づつのキットレビューという形ではありません。その名の通りタイトルが内容の違いを表わしいると言えます。パンのキムラヤの木村泰造さんが当時すでにベテラン・プラモデル・マニアであったようでキットの選び方から、制作についての注意点などノウハウを書いておられます。またプラモファンとしても知られていた木村秀政博士の序文など、当時のゆったりした趣味としてのプラモの楽しみが書かれていて、なにかギスギスした現代プラモマニアの態度を反省させられる思いです。ゆったりと言っても週末に必ず一機完成さるというのですから月産4〜5機、一年間で50機は確実。年に一機完成するかしないかの現代モデラーには頭が上がりません。どちらが豊かな趣味を持っているのか考えさせられてしまいました。

木村博士が初めてプラモを作ったのは、自衛隊次期主力戦闘機Fー104採用に関する調査にエドワード空軍基地を訪れた際レベルのXー15(1/65)をPXで買ってなぐさみに作ったのがきっかけとか。なんとも時代をかんじるエピソードですがこのレベル のXー15キットは数年前にSSPプログラムで限定再販されました。機会があれば手にとって見てください。意外な完成度に驚かれる方が多いのではないでしょうか?

「技術編」では筆塗りでのマーキングの書き方が詳しく紹介されています。模型ファンといえば木を削って作るソリッド・モデラーが多数だった頃ですからライターの方もソリッドモデルのベテランでしょう。今のスタンダードで見ても高度なカラス口や円形コンパスをつかったソリッド流テクニックが紹介されています。筆塗りに関してはこの当時既にテクニックは完成されていたと言って差し支えないでしょう。私など最近はもっぱら筆塗りなので大変役にたちました。^^)

ますますレトロなプラモ趣味にはまって行く私ですが、この「プラモデル読本」に書かれている40年も前の内容を読んでみて〜では今日のプラモデルがどれだけ進歩したのか〜プラモデルを作る楽しさは増しているのか?と考えると「さほども進歩していない」との感を禁じ得ませんでした。今さらですが「手のかからないプラモデル」「だれでもやさしく組み立てられる」などにプラモ自体の存在と矛盾する点があるのは明らかですね。プラモデルを作る楽しさは何処から来るか?...これを考えてしまいました。限りなく完成品に近いプラモデル(!?)を求めるのはモデラーではないですもんね。

「プラモデル読本」の中綴じグラビア16ページに「プラモヒットキットショー」と題して16キットが写真入で紹介されています。この時代を象徴するキットとして挙げておきます。

マルサン1/40(モノグラム)ライト兄弟フライヤー号、
マルサン1/50「飛燕」、
マルサン 1/125 ブリストル・ブリタニア、
マルサン1/100シリーズ4機(零戦、飛燕、紫電改、FW190)、
レベル1/67 F-106A デルタダート、
レベル1/40 スカイレイダー、
レベル1/82 A3Jビジランティ、
マルサン1/35「零戦」、
マルサン1/50「10式艦上攻撃機」、
レベル1/81 E.E. キャンベラ、
マルサン(ITC)マーチンMB-2爆撃機、
レベル1/25 オースチン・ヒーレー100、
レベル 1/32 ロールスロイス1911、
レベル 1/170 帆船バウンティー号、
レベル1/380 原子力商船サバンナ、
マルサン南極観測船「宗谷」

 

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