謎のマスタード色

ごく最近までハワイに九七艦攻の残骸が残っているとは知りませんでした。その残骸の色が普通の灰色ではなく緑褐色みを帯びた色だと聞いていたのですが、たまたま別件でお手紙を出したDavid Aiken 氏(真珠湾歴史協会)より、この残骸(EI-306、中島3171号)についての情報をいただきました。真珠湾攻撃時に撃墜されたものとばかり思っていたのですが、この機体、実は珊瑚海海戦時に被弾し珊瑚礁に不時着した「翔鶴」からの一機でのちに真珠湾に運ばれたものだそうです。破片の色を調査した結果、一番下に塗られているのが半光沢(FS21136)の赤いプライマーで、その上に銀(全面銀色ドープ、日華事変後期の塗装)、その上に全面「マスタード色!」(FS13440)が塗られ、最後に機体上面のみ半光沢の濃緑色(FS24064)で塗られているそうです。この全面色、マスタード色はAiken 氏も謎としながら、「真珠湾攻撃時の目撃者の証言からかつてマスタードイエローが日本軍機の塗色としてしばらくのあいだ広く信じられていた事実と関係があるのかもしれない。」と言っています。戦時中のこちらの雑誌、ポピュラー・メカニックやポピュラー・サイエンスなどにはよく黄色の零戦が描かれていたそうです。赤いカウリングの黄色い零戦は戦後のプラモ(オーロラ)の箱絵にもありましたね。

また私はやっと、野原茂著、グリーンアロー社「大図解零式艦上戦闘機」を入手し、話題の32型、21型の破片の写真を見ました。野原氏の持論であるクリアの上塗りは、この破片にはなかったようですね。この破片の色も大ざっぱに言えばマスタード系。一度にこれだけマスタード色を見せられると、灰色か灰緑かで迷っていた私としては、つい第三の色の存在を考えたくなりますが、これがいわゆる飴色なのでしょうか?ますます謎が深まる「飴色迷路」です。

 

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