アウト・オブ・ザ・ボックス

いよいよ1998年のIPMS全国大会が来週に迫ってきました。今年は私の住むベイアリアで開催されます。

アメリカで行われるプラモデルコンテストの中には"OUT OF THE BOX"というカテゴリーがあります。これは市販のキットを無改造、追加工作なしの"Straight out of the box"で競うというもので、他のカテゴリーが方法、材料については一切自由というのに対し趣が異なっています。コンテストではキットの間違いを修正したり、別の型に改造したりと追加工作で見せ場を作り競うのが一般の傾向ですが、ここでは基本工作に限っているのです。

最大規模のIPMS(International Plastic Modeler's Society)のコンテストルールにはこう書かれています。「原則として市販のキットを使用する事。塗装はエアブラシ、缶スプレー、筆塗り、アルミホイル貼りと自由。キットに付いてくるデカルを使う必要はなく市販のデカルの使用も可。汚しなどのウェザリングも可。」となっていますが工作に関してはキットの説明書に書かれている以外の追加工作はダメとなっています。例外としてアンテナ線、複葉機などのリギング(張り線)のみを許しています。このカテゴリーではキットの出来に左右されるのは明らかで、結論から言って古いキットではまず勝てません。キットを選ぶ段階でコンテストは始まっている訳です。

私は個人的にこのカテゴリーが好きで、上級モデラーのエントリーを見るのはまさに「目から鱗」です。無改造でここまで素晴しいモデルが出来る〜という証拠を目にするのは実に清々しいものです。やれ〜エデュアルドのエッチング・パーツだ〜はたまた〜ケンドールのレジン・コックピット・ディテール・アップ・セットだ〜と、最近のアフター・マーケット・アクセサリーの充実はめざましく、コンテストともなればモデラーの側にも「これらパーツもひととおり使わなければイケナイ。」というような脅迫観念があるのではないでしょうか。より多額の資金をアクセサリー・パーツなどに投じなければスタートラインにすら立てなくなっている現実に疑問も感じます。可能性が拡大しているように見えて発想の自由が狭められている気もするのです。モデラーたるもの誰しもが究極の完成モデル(そんなものがあるかどうかは別として)をイメージし製作にいそしむ訳ですが、完成度があらかじめ金額に算出できるようではつまらないと思います。

ここ数年IPMS内でこの"OUT OF THE BOX"カテゴリーに対して新しい動きがあるようです。私には意外だったのですが、本来"OUT OF THE BOX"は初級モデラーが気軽にエントリー出来るよう考え出されたものらしく、過去入賞経験のある上級モデラーのエントリーを禁ずるというのです。実際にまだルール化されていませんが、すでに上級モデラーの自主規制があるようです。〜初級モデラーのためのカテゴリーで勝って潔しとしない〜という訳です。ありとあらゆる手段を選ばない一般カテゴリーも面白いのですが、私はこのOUT OF THE BOXカテゴリーのもつ「制約」にプラモ本来の姿を発見し、あらたなるプラモの発展を期待しているので、過去入賞経験者の規制がルール化しないよう願っています。

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